2023.7.21
独立行政法人国際交流基金 公益財団法人日本国際教育支援協会
ヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages:Learning, teaching, assessment、以下「CEFR」)は、欧州の言語学習・教育・評価の場で共有するための枠組みとして、2001年に欧州評議会により発表されました。
CEFRでは、外国語の熟達度をA1、A2、B1、B2、C1、C2(C2が最高レベル)の6つのレベルに分け、各レベルで外国語を使ってどのようなことができるかを、言語能力記述文(「~できる」という文)で示しています。
CEFRは40もの言語に翻訳されており、言語や国境を越えて、外国語の運用能力を同一の基準で表示することができる国際的な枠組みとして広く活用されています。
日本語に関しても、日本の文化庁が「日本語教育の参照枠」(報告)(日本語版のみ)を、国際交流基金が「JF日本語教育スタンダード」を、CEFRを参考とした日本語学習、教授、評価のための枠組みとして発表しています。
日本の文化庁による「日本語教育の参照枠」(報告)では、学習・教育内容の多様化が進む中、各試験が判定する日本語能力についての共通の指標を整備し、利用できるようにすることが必要となってきたとの考えが示されました。これを踏まえ、日本語能力試験の受験者をはじめとした関係の皆さんが、日本語能力試験の結果を国際的な枠組み(CEFR)に当てはめて、参考とすることができるように、各種検証作業を通じて、日本語能力試験の結果にCEFRレベルの参考表示を追加します。
- CEFRレベルの参考表示は、2025年第1回(7月)試験から開始する予定です。
- 日本語能力試験の各レベルの総合得点(0点~180点)に対応するCEFRレベルの参考表示を成績書類に追加し記載します。
- 日本語能力試験のN5~N1の5つのレベル分けと、各レベルの認定の目安、試験科目、試験問題の構成は変わりません。
受験者をはじめとした関係の皆さんにとって、日本語能力試験がより役に立つ試験となるように、これからも取り組んでゆきます。
FAQ
検証作業が続いていること、および、本件に関する情報の公平性・正確性を考慮し、ご意見やご質問に個別にお答えはできませんが、多くいただきましたご質問等については、日本語能力試験公式ウェブサイトにFAQとして掲載していきますので、確認してください。
なぜCEFRレベルの参考表示を行うのですか。
CEFRは国内外の様々な分野でレベル指標として使用されており、日本の文化庁が発表した「日本語教育の参照枠」(報告)もCEFRを参考としています。こうした動向を受けて、日本語能力試験の受験者をはじめとした関係の皆さんの利便性の向上のため、日本語能力試験の結果にCEFRレベルを参考表示することとしました。これにより、CEFRに準拠した、あるいは対応付けが行われている他の日本語試験との間で、結果を相互に参照できるようになります。
「CEFRレベルの参考表示を追加する」ということですが「参考表示」とはどういう意味ですか。
日本語能力試験の結果は、得点(総合得点と得点区分別得点)と合否判定です。CEFRレベルは参考として追加するものですので「参考表示」としています。
CEFRレベルの参考表示をすることに合わせて、日本語能力試験の試験内容は変わりますか。試験のための準備(勉強方法など)を変える必要がありますか。
日本語能力試験の試験内容は変わりませんので、試験のための準備を変える必要はありません。
2025年以降、CEFRレベルが表示されていない2024年以前の成績書類は無効になりますか。
CEFRレベル表示は参考表示ですので、2024年以前の成績書類は、2025年以降も無効にはならず、引き続き有効です。
CEFRレベルの参考表示はどのような方法で行われるのですか。
欧州評議会が2009年に公表したRelating Language Examinations to the Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment (CEFR). A Manual(以下「マニュアル」)が提示している5つの手順に基づき参考表示します。
なお、「日本語教育の参照枠」(報告の90ページ)もこのマニュアルを参照の上、5つの手順について以下のように概要を説明していますので、引用します。
- ①CEFRへの理解を深める(Familiarisation)
- 対象となる試験(ここでは日本語能力試験を指します。以下の「資格・検定試験」についても同じ)の対応付けを行う専門家等に対しCEFR、そのレベル区分、言語能力記述文への理解を深める研修を行うこと。
- ↓
- ②対象となる資格・検定試験を自己点検し、明確化する(Specification)
- 資格・検定試験の問題内容や問題タイプについての自己点検を行い、当該試験の出題範囲及びレベルのCEFRとの対応付けを行うこと。また、CEFRと対応付かない領域について記述をすること。さらには、内容分析に基づき、CEFRの言語能力記述尺度を用いた当該の試験のプロフィールを描くこと。
- ↓
- ③標準化トレーニングを行い、レベルを設定する(Standardisation training and benchmarking)
- 専門家等が基準設定(資格・検定試験のスコアをCEFRに対応付けること)を行うため、試験課題と実際のパフォーマンス例に基づいて、専門家等の間でCEFRレベルに関する一貫した共通認識を得ること。
- ↓
- ④基準を設定し、CEFRの段階別表示に位置付ける(Standard setting procedures)
- 専門家等がグループでの数次の審議を経て資格・検定試験のスコアをCEFRの段階別表示に位置付けること。
- ↓
- ⑤妥当性を検証する(Validation)
- 上記①~④の手続きが適切に行われているか、質的、量的な方法にのっとり継続的に検証すること。
日本語能力試験のCEFRレベル参考表示も上記の手順で進めます。特に「④基準を設定し、CEFRの段階別表示に位置付ける」については、日本語能力試験が様々な場面で社会的に利用されている試験であることに鑑み、以下のとおり複数の手法で検証を行います。
こうした作業を通して2025年第1回(7月)試験からCEFRレベル参考表示を追加する計画です。
- [2023年]
- ・日本語教育専門家による、日本語能力試験の試験問題のCEFRレベル判定(国内外で複数回実施)
・日本語学習者に対して日本語能力試験の調査用試験およびCEFRレベル付けに関する調査を実施し、両者の結果を比較検討
①
- [2024年]
- ・日本語学習者に対して日本語能力試験の調査用試験およびCEFRレベル付けに関する調査を実施し、両者の結果を比較検討 ②
・収集したすべてのデータの分析、CEFRレベル表示のための基準設定、検証
日本語能力試験にCEFRレベルが参考表示されることにより、国際交流基金が公表している「JF日本語教育スタンダード」との関係はどうなりますか。
「JF日本語教育スタンダード」もCEFRに基づく枠組みですから、日本語能力試験に参考表示されたCEFRレベルと「JF日本語教育スタンダード」のレベルを相互に参照できるようになります。
(本件担当)
国際交流基金日本語試験センター
メールアドレス:jlpt_sankou@jpf.go.jp
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